「いじめ防止法」の制定【用語解説】

 これまで、いじめ問題は、いじめた側の行為について刑事罰として罪に問うたり、民事的に損害賠償を請求する事などでしか、救済の仕組みがありませんでした。また、民事訴訟や行政訴訟では、学校側には安全配慮義務が課されていると判例では示されていましたが、学校や教育委員会側の隠ぺいなどの問題があり、特に2011年の大津市でのいじめのケースではその問題が社会的に大きくクローズアップされました。

 大津市の事例を含め、いじめ対策のために個別の法律を作るべきと言う声もあり、実際に諸外国ではいじめ対策のための法律が制定されている前例もあります。

 そうした事も背景に、日本でも、安倍晋三政権の時代、2013年に「いじめ防止法」が制定され、学校側に対し、実態調査の義務付け、いじめを受けた生徒の保護者への情報提供の義務付け、そして、場合に応じては出席停止の活用を含めたいじめ対策を行うように学校側に義務付けました。また、この法律ではカウンセラーの活用も視野に入れた法整備となっているようです。ただし、いじめ防止のための組織に第三者を入れて公平性を確保するということは条文での記載がなされていない点は今後の課題とも言えるでしょう。

その実効性には疑問符も

 この法律の意義としては、学校での安全を確保し、いじめをなくすべき義務を学校や教師が負うべきという点を条文の中で明確にした初めての法律だという事です。単なる人間関係のトラブルではなく、決して許されない反社会的行為だという事を明確にした事は評価できるでしょう。

 しかし、現実にこの法律を運用する場合、調査の権限や、いじめた側への懲戒権が学校の教師の判断に委ねられているということ、学校による報告も校長の権限によるだけのものである以上、やはり、今まで安全配慮義務の履行を放棄してきた教員達が今後も同じような態度でいじめ問題に接してしまうと、やはり、いじめが隠されてしまい、この法律も骨抜きにされてしまう懸念があります。したがって、「いじめ防止法」で課させた義務を教師が本当に遵守するのか、その実効性が確保されていないという欠点もあります。

 また、いじめ防止法は、不登校対策という側面からみると不十分な点もあるので、学校の外で、不登校になった人の受け皿を作っていく取り組みは今後も必要になる点は変わることがないと思われます。

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