スクールカーストとは【用語解説】

 スクールカーストとは、本来、対等なはずの立場の生徒達の間で「あの子たちは『上』で、あの子たちは『下』」という序列が作られる空気となり、それを生徒たちが認識・共有することで生まれる差別の事です。この差別が、いじめの要因の一つにもなっています。

 これは、クラス替えが行われたり、中学から同じ学区内の高校に進学した場合、心機一転して、スクールカーストの「下」とされる人たちが、現状を克服しようと頑張ったとしても、すでに「カースト」の情報が共有されているために、結局はいじめられ続けるという負の連鎖が起こります。

 また、そもそも、本来は平等であるはずの人間なのに、スクールカーストの「下」とされる人たちは、学校の中の狭い世界の「ランク付け」だけを根拠に、「努力しないから悪い」と決めつけられ、その結果、自分の自由や個性を失わせてまで、現状を克服しようと頑張ろうとしますが、それでもいじめが続いてしまい、結果的に、いじめの被害者は、自分の自由や個性を捨てるという苦しい決断をした挙句に、いじめられる状況は結局止まらないという悪い循環の中で、精神的に追い詰められる事になります。

 また、そもそも、「カースト」の「下」から「脱出」するために求められる「努力」というのも、結局は「キャラを変える」こととか「趣味でもないものを無理やり趣味だと思い込んで周囲に同調する」ことなどだったりするなど、きわめて理不尽な内容のものも多いです。場合によっては、スクールカーストの「上」とされる生徒たちが悪質な性質を持っている場合、「真面目すぎるから悪い」という根拠で、非行に走る事を「推奨」するようなスクールカーストすら存在することもあり、学校の荒廃にもつながる深刻な問題です。

被害者のアイデンティティが壊される上に、結局いじめも収束しないという「悪循環」も懸念される

 本来、個人の個性、個人の「違い」の範疇に収まるだけの話のはずのものや、趣味や娯楽といった、本来は個人で楽しめばよいだけのものに対して、学校・クラス側が、いじめ被害者に対して「努力」を求める、その「努力」をしない人間が悪いと決めつける、といったことがあり、しかもその努力というものが一般的に考えるとくだらない中身であり、そのくだらない中身を、被害者達は「強要」される、そのことも被害者にとっては大きな苦しみである上に、しかもそれを「強要」されても、「カースト」の「上」にはなれない、という点でも、スクールカーストはきわめて理不尽な、教室内の慣習です。

「スクールカースト」を利用していじめに加担する教諭すらいる

 その背景には、いじめ被害者に対する「いじめられる人が悪い」という世間からの偏見があります。しかも、最近では、教諭が「立場の強弱をわからなければならない」などという、教師にとって都合の良い独善的な解釈が横行しているようです。本来、「強い」立場の人が正しいとは限らないのにもかかわらず、「強ければ何でもやっていい」かのような認識がはびこっていて、そのため、本来はいじめを止めるべき立場の教諭ですら、人権意識が欠如した教育方針に基づいて、いじめを助長し、加担しているという、許し難い現状があるのです。

 このように、日本国憲法で定められている「法の下の平等」の概念をないがしろにするような教育を正当化しているケースもあり、教諭側がスクールカーストを学級運営の中で「利用」するといった現状が学校教育の中ですら存在します。また、教諭側がスクールカーストの「下」とされる人に対するいじめに加担し、スクールカーストの「上」とされる人に同調する形でいじめに加担することで、クラスの実態を知らない外部の人たちからは「まとまりのあるクラス」という評価を受けようとする教諭すらいます。教諭の「出世」のために、特定の生徒の人権を著しく蹂躙する、教諭側による人権侵害行為というのは現実に横行しているわけですが、こうした人権侵害は許されるものではありません。

 そもそも、「力関係」以前の問題として、人権については平等に保障され、学校で安全に過ごす権利は誰もが持っているはずです。一刻も早く、スクールカースト問題を解消し、教育における法の下の平等が保障されるような実効性のあるいじめ対策が行われる必要性があります。

 また、スクールカーストは「学校の中の慣習」であるにしかすぎないが、学校の中では絶対的なルールになっているために深刻ないじめに発展するということが特徴です。またそれによって被害者のアイデンティティが壊されることになると、取り返しのつかない、精神的な後遺症をも生む結果になります。被害にあった人は、自らの自尊心や精神を保つために、緊急避難的に不登校という選択をしたうえで、自分を対等に扱ってくれる、学校以外の世界に身をおく経験をして「自分は社会的には地位が低いわけではない」という事を実感することも必要になる場合があります。そのことこそが、後々の精神的な後遺症を小さくするためには重要な事ともいえます。

sponsored link

メニュー

inserted by FC2 system