安全配慮義務といじめ【用語解説】

 不登校の背景には、深刻ないじめがあるケースがあります。しかし、深刻ないじめがあるにもかかわらず、学校関係者や教育委員会はいじめに対して十分な対応を取らなかったり、いじめを隠そうとしたりするケースが後を絶ちません。

 そのため、いじめによる不登校であっても、統計上は、家庭の問題や本人の問題というようにすり替えられている場合もありますし、事実関係について虚偽の内容を作り上げて報告したりして、統計上のいじめの件数が実態と乖離しているということは一般的にも指摘されている事です。また、明らかに重大な人権侵害であっても、例えば「いじめ」を「いたずら」や「けんか」と言い換えたりして、いじめの事実を認めない学校も多くあります。

 そもそも、いじめ問題について、学校の教員や教育委員会がいじめの事実を隠したり、被害者に対して責任転嫁したりすることは、決して許容されるべきものではありません。いじめという重大な人権侵害に対して、学校や教育委員会が適切な対応をしないということはあってはならないのです。また、学校の教員が加害行為に関与している場合は、さらに重大な問題としてとらえていかなければなりません。

 生徒が安心して学校生活を送る事が出来るよう、学校には安全配慮義務があると法的には解釈されています。生徒の身に危険が及びそうになったら、そうした危険が現実のものとならないように、学校の教員は適切な配慮をすべきですし、当然、その責任は教育委員会にも及ぶ問題です。

 いじめによって、何らかの形で不登校状態になったケースも少なくない現状がありますが、学校の教員や教育委員会が、心無い言葉で被害者を追い詰めているケースの場合、いじめられている人に対して、まずは、「あなたは悪くないんだよ」と声を掛けてあげる事が大切です。いじめの問題は、当然ながら加害者の責任も問われますが、学校や教育委員会の責任も問われるべきです。したがって、いじめ問題は、被害者に対して責任を問うべき問題ではありません。

 いじめによる不登校の場合、被害者の自尊心が傷つけられ、深刻な状態にあることが多いので、保護者などの周囲の大人が、被害者に対して「あなたは悪くないんだよ」と声を掛け、被害者の心のケアに務める事が大切です。また、学校の教員がいじめに関与していたり、教員の不適切な発言がいじめに結びついたりしたケースの場合、被害者は大人に対する不信感を持っている場合も多くあり、不登校の長期化も考えられますので、まずは被害者の言葉に耳を傾けていく姿勢を見せる事が大切です。

(追記)2013年より「いじめ防止法」が制定され、学校側に対し、実態調査の義務付け、いじめを受けた生徒の保護者への情報提供の義務付け、そして、場合に応じては出席停止の活用を含めたいじめ対策を学校側に義務付けました。学校での安全を確保し、いじめをなくすべき義務を学校や教師が負うべきという点を条文の中で明確にした法律ははじめてですが、「いじめ防止法」で課させた義務を教師が本当に遵守するのか、その実効性が確保されていないという欠点もあります。

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