教育委員会制度とは【用語解説】

 いじめや体罰問題をめぐる一連の問題で、教育委員会の事なかれ体質などがクローズアップされ、教育委員会制度の仕組みを廃止ないし改革しようとする動きもあります。

 一言で教育委員会と言っても、マスコミがよくクローズアップしている「教育委員会」は、実は狭い意味での「教育委員会」にしかすぎません。現行の制度では、議会の承認により首長によって任命された3~6人程度の委員で構成され、その中から教育長を選出することになっています。

 また、これよりも「広い範囲」の教育委員会もあります。市役所・県庁の職員に現場の教員出身者を含めた職員などによって構成されている「教育委員会事務局」が、広い意味での教育委員会であり、これは先に述べた教育委員会の実際の業務の処理のためにつくられた組織です。一般の市民はこれを「教育委員会」と呼んでいるように思いますし、市役所や都道府県庁のホームページ等でも、事務局のほうを「教育委員会」と称していることが多いのが実態です。

 実際に現在いじめを受けている人が、マスコミでの報道や前例を参考にしながら、自らが直面している問題について教育委員会と交渉する場合、2つの「教育委員会」が混在しているような印象を受け、どこを窓口にして交渉に当たればよいかわからずに混乱してしまうケースが少なくないのもそのためです。

教育委員会制度改革でいじめ・体罰問題は解消できるかは不透明

 現在の学校のいじめの隠ぺいで問題になっているのは、狭い意味での「教育委員会」あるいは広い意味での「教育委員会」(教育委員会事務局)、どちらにしても、結局はいじめの事実を認めずに隠してしまい、不正を黙認しているという点です。その背景には、「教育委員会事務局」には現場の教員だった人物が多く在籍しているため、「身内意識」からいじめを隠しやすい構造となっている点もあります。

 また、狭い意味の教育委員会の場合でも、その責任者である教育長が教育委員の中での選任とはなっていますが、実際には教育委員を決める際にも、首長と議会の関与によって決められた人たちで教育委員が構成されているわけですし、当然その中の一人が教育長になるという時点で、結局、首長の意向は、教育長を任命する側もされる側も強く反映されているわけです。

 近年の教育委員会改革では、教育長の選出を教育委員の中からではなく、首長の直接任命の形に変え、教育長が教育委員から独立したかたちで教育委員会が教育長を監視していく案や、教育委員会の制度を原則廃止して首長が教育行政に直接関与するなどの案が出てきているということだそうですが、一連のいじめ問題を受けた改革案として出されている多くの案でも、実際には教育長の選任に首長が間接的に関与するか直接的に関与するかの違いにしかすぎず、結局は、いわゆる「教育ムラの世界」の身内だけで事を決めていて、首長もこれに加担している点では大きな改革が期待できないのが現状です。

 学校教諭や教育委員会がいじめ対策を真剣に行わず、それによって一番傷ついているのはいじめや体罰を受けた子ども達です。自尊心を傷つけられてつらい思いをしている子ども達が多い現状は深刻です。保護者や、周囲の大人たちが、可能な限り、傷ついている子ども達を守ってあげることも、きわめて重要な事です。

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